家族仲が良く、平穏な日々を過ごしている方でも、終活を考える価値はあります。終活は、ただの準備ではなく、自分の人生を振り返り、家族との絆を深める機会にもなるのです。未来に対する安心感を得るために、今から終活について考えてみませんか?本記事では、家族仲が良好であっても終活をするべきかどうかについて迫っていきます。
絶対にトラブルにならない保証はない
どんなに家族仲が良好でも、家族が絶対に揉めない保証はありません。以下で2つの視点から詳しく解説します。
血のつながった家族だけの問題ではなくなる
これまでどんなに仲が良くても、家族にはそれぞれ自分の世界や都合があるものです。遺産分割は血のつながった家族だけの問題にとどまらないのです。
たとえば、親が亡くなったとき、子どもたち同士は仲が良くても、長男の嫁、長女の旦那など、直接的には相続人ではなくても、第三者として横やりを入れることも少なくありません。すると、少しずつ心理的なしこりが増え、最終的に大きなトラブルとなることもあります。
大きな財産がなくても安心はできない
さらに注意が必要なのは、故人に大きな財産がないから大丈夫と考えている場合です。普通の家庭であっても、住んでいた家をどうするのかや、亡くなったあとに借金が発覚したなどのトラブルは多いものです。こうした場合、今まで家族仲が良好であったとしても、意見がぶつかる可能性が出てきます。
住まいの問題はとくにデリケートで、家を売るのか、誰かが住み続けるのか、維持費や修繕費を誰が負担するのかといった具体的な問題が発生します。これにより、家族間の対立が生まれやすくなるのです。
トラブルになりやすいケースとは
どんなに家族仲が良好であっても、相続の場面ではトラブルが生じやすいケースがあります。以下では、とくにトラブルになりやすい3つのケースについて説明します。
夫婦間に子どもがいないケース
まず、夫婦間に子どもがいないケースです。亡くなった人に子どもがいれば、相続権は配偶者と子どもに帰属しますが、子どもがいない場合、相続人は残された配偶者と義理の父母、あるいは義理の兄弟姉妹となります。
普段は義実家と仲良くしていても、お金の話になると意見が衝突する可能性が高いでしょう。とくに義理の関係にある者同士では、価値観や期待が異なることが多いため、円満な話し合いが難しくなる場合があります。
離婚した相手との間に子どもがいるケース
次に、離婚した相手との間に子どもがいるケースです。離婚後も、子どもは相続権を持ちます。たとえ親権がなく、長期間音信不通であったとしても、その子どもは相続人のひとりです。再婚している場合、現在の配偶者やその子どもは、離婚した相手との子どもと遺産分割協議をおこなわなければなりません。
この状況は心理的な負担が大きく、相続人同士の関係が悪い場合には、合意に至るまでに多くの時間と労力を要することがあります。とくに、現在の家族と離婚した相手の子どもとのあいだに感情的な亀裂がある場合、協議はさらに複雑化し、トラブルの火種となり得ます。
判断能力のない相続人がいるケース
最後に、判断能力のない相続人がいるケースです。遺産分割協議には、すべての相続人の同意が必要とされていますが、相続人のなかに認知症や障害により判断能力のない方がいる場合、協議が成立しません。この場合、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらう必要がありますが、その手続きには数か月から半年程度の時間がかかることがあります。
また、相続税の申告・納付は相続開始後10か月以内におこなわなければならず、この期限に間に合わないと延滞税が発生したり、税金の軽減制度が利用できなくなるリスクがあります。成年後見人の選任手続きが長引くことで、相続手続きが遅れ、結果として相続人全員にとって大きなストレスや負担となる可能性があるのです。
万が一のため遺書を書いておこう
万が一のために遺書を書いておくことは、故人の意思を尊重し、残された家族の負担を大幅に軽減する重要な手段です。今はトラブルがなく、家族が円満に見えても、生きているあいだは本人がバランスを保っている場合が多いものです。
しかし、故人がいなくなることで、相続に関する意見の相違が表面化し、思いもよらぬトラブルに発展する場合があります。愛する家族が不仲にならぬよう、最後の贈り物として遺書を書いておきましょう。さらに以下では、少し特殊なケースとして遺書の残すことを強くおすすめする事例を紹介します。
婚姻届を提出していない内縁のパートナーがいるケース
婚姻届を提出していない内縁の妻や夫がいる場合は、絶対に遺書を書いておく必要があります。内縁関係にあるパートナーは法定相続人に含まれず、遺産を相続する権利がありません。そのため、内縁の妻や夫に遺産を渡したい場合は、遺言書を通じて明確にしておくことが必要です。遺言書がないと、内縁のパートナーは何も受け取れず、故人の思いが実現されないままになってしまいます。
法定相続人以外の人に財産を渡したいケース
内縁関係と同様に、法定相続人以外の人に財産を渡したい場合も、遺書を必ず書いておくべきです。遺言書がなければ、家族以外の第三者に遺産を贈れません。かつてお世話になった友人や、法的に認められていない人に遺産を残したい場合、遺言書を残すことで、その意思を確実に実行できるようになります。
まとめ
どんなに家族仲が良好でも、相続に関しては絶対にトラブルにならない保証はありません。とくに子どもがいない夫婦や離婚歴のある家庭、判断能力のない相続人がいる場合などは、トラブルが発生しやすいです。
こうしたリスクを回避し、家族が円満に相続手続きを進めるためには、遺書を準備しておくことが大切です。遺言書を作成することで、故人の意思を明確に伝え、残された家族への負担を軽減できます。今から終活を始め、将来の安心を確保しましょう。